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会社が在庫を持つことは悪なのか?在庫に潜むリスクとは?

こんにちは。
僕は金融系サラリーマンとして、様々な会社経営者とお話し、その企業の財務分析もかなりしてきました。

業態にもよりますが、会社経営をする上で、在庫に対する考え方はある程度持っておいた方がいいと思います。

僕の培った経験から、在庫に対する考え方をシェアします。

この記事が、会社を経営している方、これから起業をしようという方、実務で企業財務をしている方などの参考になれば幸いです。

まずは在庫を持つことのデメリットから解説します。

在庫を抱えるデメリットは3つある

在庫を抱えることで生じるデメリットは以下の3点です。

①資金繰りが悪化する。

②在庫が多ければ、管理コストが余計にかかる。

③資金調達先である銀行からの評価が悪くなる可能性がある。

デメリット①:資金繰りが悪化する

在庫を持つことで、資金が一定期間固定されてしまいます。

例えば、現金1,000万円を元手に商売を始めたとします。在庫として700万円の仕入を行いました。これが800万円で売れて、現金がもらえれば、元手1,000万円が1,100万円になります。

しかし、問題はその期間です。

この仕入商品の売れる見込みが半年後とかになると、半年間、現金700万円は在庫に変化しっぱなしで固定化されてしまいます。

当初元手1,000万円ー在庫仕入700万円=現金残り300万円で、半年間、経費支払やその他仕入を行っていかなければなりません。

デメリット②: 在庫が多ければ、管理コストが余計にかかる

在庫はその量に従って、コストが掛かると思ってください。

倉庫を契約している場合は、スペース料や入出庫、管理手数料が主なコストです。これは目に見えるわかりやすいものですが、自社の人的費用についても、負担が増えます。

在庫を管理する従業員の、データ管理コスト、必要なものを探すコスト、棚卸作業コストなど、生産性や人件費の面においても、企業としてのコストパフォーマンスが落ちることになります。

デメリット③:取引銀行からの評価が悪くなる可能性がある

一般的に、在庫が多くなると、銀行の見る目が変わります。主に以下の2つポイントで見るようになります。

ポイント1:在庫に資産価値があるのか

会社が保有している在庫が、どれくらい資産価値があるのか検証してきます。つまりその在庫は、ちゃんと現金化するのか、という点で評価してきます。現金化する見込みが無ければ、その会社の決算書を見るにあたって、その価値を控除します。

例として、在庫が3,000万円、純資産(=資産ー負債)が1,000万円の会社があったとします。

銀行は3,000万円の在庫のうち、1,800万円の在庫について資産価値無しと判断した場合、在庫勘定は元々の3,000万円から1,800万円を引いた1,200万円と見ます。

しかし問題はそこでは無く、貸借対照表の純資産からも1,800万円を引きます。すると、その会社の純資産は△800万円となり、いわゆる債務超過となってしまいます。

ポイント2:粉飾決算をしているのではないか

加えて、在庫が水増しなのでは無いかと疑ってきます。

在庫の水増しは決算書の利益を押し上げることになるので、つまり粉飾決算の可能性について、検証してきます。

わかりやすく言うと、決算書で商品の原価を出す時の計算式は、期初の在庫+期中の仕入高ー期末の在庫となります。

この式は「期末の在庫」を大きくすれば、値が小さくなりますね。つまり原価の値が小さくなって、利益が大きく見せることができます。

その会社が粉飾のつもりが無くても、在庫が過剰と判断された場合、銀行は粉飾の可能性について見るようになります。

在庫の増加は、銀行融資の審査で不利となる可能性がある

以上の2点から、在庫が大きくなるリスクとして、銀行から資産価値の減少や粉飾決算の疑いという目で見られる可能性があります。つまり融資の審査を受ける上で、不利となってしまうリスクが出てきます。

在庫を持つデメリットまとめ

もう一度整理すると、在庫を持つデメリットは、

①資金繰りが悪化する。
②在庫が多ければ、管理コストが余計にかかる。
③資金調達先である銀行からの評価が悪くなる可能性がある。

この3点です。

しかし、在庫を持つことは本当に「悪」なのでしょうか?ここからは、経営する側の目線として、在庫を持つ意味について解説します。

在庫を持つ意味とは?稼ぐ会社の在庫に対する実態を解説!

僕は色んな経営者と商談する中で、在庫の考え方について、様々な見解を聞きました。

業態にもよりますが、稼ぐ会社が経営判断として在庫を持つ理由は、大きく分けて2つあるように感じます。
その2つについて、お伝えします。

稼ぐ会社が在庫を増やす理由は2つある

リスクテイクに積極的な経営者は、時に戦略的に在庫を増やします。

その背景は以下の2つです。

①販売先に対する即納戦略
②仕入先に対する早期買い戦略

それぞれの戦略について解説します。

理由①: 販売先に対する即納戦略

在庫を増やすことによって、販売先に対する柔軟な対応に応えられます。

例として、あなたの会社は家電卸会社、販売先はショッピングセンターや家電小売屋とイメージしましょう。あなたはこの夏の猛暑、エアコンの強い需要を予想して、エアコンを大量に仕入れました。

予想通り、7月になってショッピングセンターや家電小売屋のエアコンが品切れ。その時、あなたは大量に仕入れたエアコンを販売先に即納できます。

その時、あなたは販売先に対して、通常価格で卸すでしょうか?販売先は「今の暑いうちにエアコンを売りたい!」と思っていて、この猛暑でエアコンを販売できない機会損失を恐れています。

つまり、あなたは即納という在庫を持つ強みを生かして、卸先に対する販売価格を上乗せできるのです!

これが販売先に対する在庫戦略です。

また、仕入先に対しても、同様に有効な戦略があります。次に解説します。

理由②: 仕入先に対する早期買い戦略

仕入先から、早めに商品を仕入れることも、戦略として有効な場合があります。

もう一度、あなたが上の家電卸会社を経営しているとして、同じ例で一緒に確認してみましょう。今度、仕入先は家電製造会社とします。

同様にあなたは、この夏の猛暑とエアコンの需要の強さを予想しました。春先早々に、家電製造会社からのエアコンの大量仕入れを決断します。

その時、あなたはこの製造会社から、通常価格でエアコンを仕入れるでしょうか?この時期、製造会社は「この夏のエアコンはどれくらい売れるだろうか。作っても売れ残ったら困るな…」と思っています。

そんな中で、製造会社からすれば、春先早々にエアコンを捌けるのは、不安を払拭する絶好の機会となります。それこそ、製造会社の在庫リスクを抑えることができるのです。

そのような相手に対して、早期仕入れの条件として一定金額の単価割引きを引き出すのに、さほどハードルは高くないでしょう!

これは仕入先に対する在庫戦略です。

2つの在庫戦略がハマれば、利幅はダブルで拡大する

2つの在庫戦略について解説してきましたが、それぞれは1つの取引における入口と出口の関係なんです。

①販売先に対する即納戦略…入口
②仕入先に対する早期買い戦略…出口

この在庫戦略はハマれば、入口と出口のダブルで利幅が取れます。

稼ぐ経営者(特に卸売会社)は、この点を理解し、日々在庫と向き合っています。

在庫の保有は「悪」ではない!儲けるために必要なリスクテイクである

稼ぐ経営者は大きく成功するために、リスクを取ることは必要であると考えています。

在庫に対しても、上段で触れた3つのデメリットを理解した上で、時には必要なリスクテイクであるという考えを持っています。

販売先から「欲しい」と言われてから、仕入先に対して同じ物を「欲しい」と言っているような会社は、近年の激しい競争の中で生き残ってはいけません。

稼ぐ経営者が、在庫を増やすのは、勝機を嗅ぎ取った勝負の時です。

確かに、何となく増えた在庫は過剰と言えますが、勝てると思って仕入れた在庫は、仮に売れなかったとしても、稼ぐためのリスクテイクとして、必要な投資だったと言えます。

この記事でお伝えしたいことは、一概に在庫を「悪」とは言えないし、リスクテイクができずに在庫を抱えない方が、機会損失であるということです。

色んな経営者に触れ、稼ぐ会社、そうでない会社を見てきた僕の経験則から、一般的に抱えることが「悪」と言われる在庫にテーマを絞って、記事を書いてみました。

現経営者や起業予定者など、この記事が少しでも有益な情報となれば幸いです。